性病について
STDはいま,10〜20代の若者を中心に、急増しています。
STDとは、「Sexually Transmitted Diseases」の略で、訳すると「性感染症」です。
性感染症(性病)は、性交渉または性交渉に類似する行為によって人から人へ感染する病気です。
一人一人が正しい知識と強い意志を持って行動することで、感染を防ぐことができます。
また早期発見と早期治療によって、重症化を防止することが大切です。
不安に思ったら、ためらわずに受診してください。
STDはどのように感染するのでしょうか
多くのSTDは、
(1)性交渉による感染
(2)血液による感染
(3)母子感染
この3つが感染のルートですが、性交渉による感染が大部分を占めています。
STDの多くは、症状がほとんど現れないため、知らず知らずのうちに感染している場合もあります。
ほとんどのSTDは早期に発見すれば、治療によって完治することができます。
でも治療せず放っておくと、不妊症など重い症状を引き起こす可能性があります。
これは男女ともにいえることです。
STDに感染すると赤ちゃんにも影響が…
妊娠中の女性がSTDに感染すると、流産や早産の危険が高まります。
何らかの微生物が、お母さんから赤ちゃんに感染することを「母子感染」といいます。
妊娠前から元々その微生物をもっているお母さん(キャリアといいます)もいれば、妊娠中に感染するお母さんもいます。
妊娠中は免疫力が低下して感染症にかかりやすくなっているので、感染予防を心がけましょう。
妊娠を希望している人はSTDの検査を受け、未来の赤ちゃんのためにも、予防、検診、早めの治療をしましょう。
クラミジア
クラミジアは現在の日本において、感染者数が一番多いSTD(性感染症)で、特に10代から30代にかけて感染者が増加しています。
性交渉または類似の行為により、性器や咽頭の粘膜に感染します。
感染後、約1〜3週間程度の潜伏期間を経た後、症状が出現します。
子宮頸管炎を引き起こし、下腹部に痛みを感じる、排尿時や性交渉時に痛みを感じる、おりものが増加する、不正出血が起こる、といった症状が現れます。
ただ女性の8割、男性の5割で何の症状も起こさないと言われています。
症状があっても軽微である場合が多いため、早期の発見が難しい病気です。
そのため感染に気づかないケースが多く、知らないうちにパートナーに移してしまう危険性が高いのが特徴です。
パートナーがクラミジア感染症と診断されたときは必ず婦人科を受診しましょう。
早めに薬を内服すれば、ほとんどの人がすぐに治ります。
妊娠中のクラミジア感染の問題点は、早産の原因となる可能性があることと、分娩時に赤ちゃんが産道を通ることで赤ちゃんに感染する可能性があることです。
赤ちゃんが感染してしまうと、新生児肺炎や結膜炎を引き起こすことがあります。
潜伏期間
1~3週間
診断
子宮頸管の分泌物や腟壁の粘膜部分の腟分泌物を、検体として採取して検査します。
治療
治療ではマクロライド系、キノロン系、テトラサイクリン系の抗生物質を使って、1~2週間の治療を行います。
梅毒
梅毒とは、「トレポネーマ・パリダム」という細菌に感染することで、全身に症状が現れる感染症です。
性交渉または類似の行為により感染します。
同じ感染経路を持つやクラミジアやHIVに同時感染することもあります。
自覚症状がすくなく、潜伏期間が長いため、知らないうちに多くの人に感染させてしまう可能性があります。
感染後、約2〜3週間程度の潜伏期間を経た後、症状が出現します。
日本では2011年以降、梅毒の患者数が増加傾向にあり、厚生労働省によると2017年には5,820件の報告数がありました。
若い女性が特に急増している
梅毒の患者数は男性が多いのですが、最近では女性患者も増えており、特に20代の女性が急増しています。
妊娠4月以前に感染すると流産になる可能性が高いため、注意が必要です。
梅毒が疑われた場合、早期治療により母子共に問題が起こる可能性は少なくなります。
発症後の症状
【第1期:感染~3ヶ月】
2~3週間の潜伏期間後、外陰部に大豆~そら豆大の硬いしこりができます。
そけい部のリンパ腺も腫れますが、この時期に痛みはありません。
※これらの症状は一度、自然に消えますが治ったのではありません。
【第2期:感染後3ヶ月~2・3年くらい】
この時期は、全身に菌が広がる時期で、感染力が最も強い時期です。
梅毒疹というバラ色の発疹が全身にできます。
完治しないでいるとこの状態が2~3年続きます。
又、頭痛・発熱・間接痛・倦怠感などの症状が出ることもあります。
【第3期:感染後2・3年~10年くらい】
骨・筋肉・内臓などに硬いしこりができます。
【第4期:感染後10年以上経過】
心臓・血管・神経までおかされる状態で、死に至ることもあります。
進行性の麻痺・梅毒性の動脈炎・脊髄の痛み・認知症・失禁等の症状が出てきます。
梅毒に感染したら早期治療を行う必要があります。
既に症状がある場合は、受診して治療を行って下さい。
また梅毒は早期発見も大切になってきますので、梅毒に感染している不安がある人は検査を行いましょう。
潜伏期間
2~3週間
診断
梅毒の診断には血液検査をおこないます。
治療
梅毒の病原体である梅毒トレポネーマは抗生物質に弱いため、主にペニシリン系の薬剤による薬物療法を行います。
梅毒は病期によって治療期間が異なり、個人差もあるので、医師の指示を守って治療してください。
尖圭コンジローマ
この病気は最近増加している性感染症の一つで、性交渉によって感染します。
尖圭コンジローマは、子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウィルス)の一種による感染症です。
HPVには150種類以上の型があり、悪性化する(がんとなる)可能性がある「ハイリスク型」と「ローリスク型」に分けられます。
ハイリスク型は子宮頚がんの原因となり、ローリスク型のHPV(6型と11型)が尖圭コンジローマを引き起こします。
発症後の症状
外陰部や肛門にかけて小さなイボがたくさんできてくる病気です。
米粒・小豆粒くらいの大きさで、にわとりの鶏冠のようになっており、増えていくとカリフラワー状になります。
症状が進行していくと、かゆみ・熱・排尿痛・性交渉痛・歩行時の痛みが出てきます。
感染してから数週間から数ヶ月を経て現れてきます。
イボ以外の自覚症状がなく、潜伏期間が長いために性感染症と気づかれないまま過ごすことが多くあります。
潜伏期間
数週間から数ヶ月
診断
尖圭コンジローマは基本的に視診によって診断されます。
治療
主に薬の塗布によって治療します。
性器ヘルペス
この病気は性感染症の一つで、性交渉によって感染します。
性器ヘルペスとは、主に単純ヘルペスウイルス2型が原因で、性器やお尻の周辺に水ぶくれができる病気です。
単純ヘルペスウイルスには1型と2型の2種類あり、主に下半身に症状が出るもの(2型)と、口唇や顔面など上半身に症状が出るもの(1型)があります。
単純ヘルペスウイルスに感染しても80~90%の人はすぐには症状が現れません。
感染してから数年後に症状が出る場合(再発)もあれば、感染後数日で症状が出る人もいます。
このウイルスの特徴は、最初の感染(初感染)後に免疫ができても、体力の低下や外傷などの機会があれば再発を繰り返すということです。
発症後の症状
感染後、約2〜10日間程度の潜伏期間を経た後、症状が出現します。
性器に小さな水泡が多数でき、痛みとかゆみが続きます。
一般的に、初感染時の性器ヘルペスの症状は強く、再発時は弱くなることが多いといわれています。
潜伏期間
2~10日間
診断
血液検査によりヘルペスウイルスに対する抗体を検査します。
治療
抗ウイルス薬(飲み薬・塗り薬)を使って治療を行います。
トリコモナス膣炎
トリコモナス膣炎とは、トリコモナスという原虫が膣内に寄生して膣に炎症が起きる病気です。
また感染経路が多く、主な感染は性交渉ですが下着やタオル、便器や浴槽といった場所に触れる機会があれば感染することが知られています。
性交渉経験のない女性や幼児にも感染する可能性があると考えられます。
自分だけ治療をして完治したとしても、トリコモナスに感染したままのパートナーと性交渉を行うと再び感染してしまいます。
発症後の症状
感染後、約10日間程度の潜伏期間を経た後、症状が出現します。
泡状の悪臭の強い黄色いおりものの増加と、外陰・膣の刺激感、強いかゆみを起こします。
トリコモナス膣炎は感染していても症状が出ないという感染者のかたが約20~50%います。
その為、気づかずに放置するといったケースが多いです。
潜伏期間
10日間前後
診断
一般的に腟分泌物を採取して培養検査をします。
治療
膣錠や内服薬によって治療します。
淋病
淋病は、性交渉または類似の行為により、性器や咽頭の粘膜に感染します。
淋菌への感染により起こる感染症です。
感染力が強く、一度の性行為で感染する確率はおよそ30%とされています。
淋菌に感染することで生殖器を中心に炎症が生じます。
女性の場合は数週間から数カ月間、自覚症状がないことが多いです。
また淋菌感染症にかかっている人のうち20%~30%が性器クラミジアも併発しています。
発症後の症状
感染後、2~7日程度の潜伏期間を経た後、症状が出現します。
女性はおりものが多くなるものの、通常は痛みを感じることがありません。
感染に気がつきにくいため、注意が必要です。
潜伏期間
2~7日程度
診断
一般的に腟分泌物を採取して培養検査をします。
治療
抗生剤の投与または点滴をおこないます。